2022年9月のIASB会議
2022年9月のIASB会議において、2022年6月のIFRICで最終化されたアジェンダ決定「電子決済システムを通じて金融資産が決済された結果受け取ったCashの取扱い」が議論されました。論点の概要については、2022年6月の当該論点のブログ記事をご参照ください。
6月のIFRIC会議ではアジェンダ決定が最終化されていたため、次のステップはIASBに対して当該アジェンダ決定に反対するか否かを確認し、反対されなければアジェンダ決定が確定する(アジェンダ決定が公表される)という予定でした。
しかし、2022年7月のIASB会議では当該論点は議論されず(1回スキップされ)、2022年9月のIASB会議に議題として挙げられた際のその内容は、IFRICのアジェンダ決定に反対するか否かを問うものではなく、IASBによる基準設定の可能性を探るべきことを提案するペーパーでした。
これは、当該アジェンダ決定が確定する(公表される)場合には、企業はCFを受け取る契約上の権利(又はCFを支払わなければならない法的な義務)が消滅するタイミングを検討しなければならず、実務上の負荷が大きい(実務が混乱する)との懸念が大きいとされています。また、IFRICでアジェンダ決定が承認されたのに(IFRICでは基準設定を行わないと決定したのに)、IASBに対しては基準設定の可能性を提案するという、矛盾しているような対応については、IFRICの権限とIASBの権限が異なるからという説明がされています。
結果として、当該論点についてはアジェンダ決定の公表は見送られ、IFRS9号の分類と測定のPIRの中で基準設定の可能性を探っていく(基準設定を行うことが確定したわけではなく、現時点ではあくまでその方向の可能性を探っていく)ことになりました(2022年6月のブログ記事ではアジェンダ決定が公表されることを予想していたのですが、予想は見事に外れました)。当該論点は認識(及び認識の中止)の論点であり分類と測定の論点ではありませんが、現在、IFRS9号の分類と測定のPIRが進行中であるため、その枠を使ってどういう基準設定を行えば実務への混乱を最小化しつつ有用な会計情報が提供できるかを探っていくことになります。
おそらく、今回のIFRICの事実状況にあるようなある一定の要件(状況)を満たした場合においては、簡便的にCashを認識する/認識の中止をすることを認める基準改訂が提案される方向で議論がされていくのではないかと思われます。今後の議論については、IFRS9号の分類と測定のブログ記事にて解説をしていきたいと思います。