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はじめに
2022年3月に公表されたDraft S1/S2に対して寄せられたコメントを受けての再検討の会議も今月で終了です。
特定のISSB基準が無い場合における他の情報ソースの利用
ISSBが現在最終化を目指しているサステナビリティ開示基準はDraft S1とDraft S2の2つあり、Draft S1はサステナビリティ開示基準の全般的な要求事項を定め、Draft S2は気候変動に関する開示基準になっています。サステナビリティ関連のリスク・機会は気候変動以外にも様々あり(人権や人的資本等)、ISSBはDraft S1/S2を最終化したのち、順次、次のトピックを決めて気候変動以外の基準開発を進めていく予定ですが、Draft S1は企業がIFRSサステナビリティ開示基準を初度適用した当初から気候変動を含む全てのサステナビリティ関連のリスク・機会についてTCFDに沿った開示を要求しています。
このように、特定のISSB基準がない中で、全てのサステナビリティ関連のリスク・機会に関するサステナビリティ財務情報の開示を要求しているため、Draft S1では特定のISSB基準が無い場合において他の情報ソースを参照/検討したうえで、リスク・機会の特定及び開示情報を決定しなければならない(shall consider)としていました。
この点、2022年11月のISSB会議では、Draft S1において定められていたshall considerをSASB基準についてそのまま踏襲することが暫定決定され、CDSBガイダンスについては参照を任意(may consider)に変更する暫定決定がされていました。
今月のISSB会議では、11月の会議では決議がされていなかった他の情報ソースのうち、投資家等を情報利用者とする他のサステナビリティ開示団体が公表した直近のガイダンス及び企業と同じ産業や地域に属する他の企業の開示情報についても、may consider(参照を任意とする)に変更する暫定決定が行われました。
同時に、11月の会議で懸念が表明されていたGRI及びESRS基準について、ISSB基準本文に含めるのではなくISSB基準のAppendixに含める形で参照することを許容(may consider)することが暫定決定されました。GRI及びESRSについては投資家等を主たる利用者とする開示情報ではなく、投資家等を含むマルチステークホルダー向けのサステナビリティ開示情報とされているため、リスク・機会を特定する局面における参照は許容されておらず、あくまですでに特定されたリスク・機会に関して開示情報を検討する局面においてのみ参照することが許容されることになりました。ISSB基準は投資家等にフォーカスしたサステナビリティ財務情報を作成することを目的としており、当該ISSB基準がマルチステークホルダー向けに開発されている基準(GRIやESRS)を参照する必要性やリスクについて懸念はあるものの、GRIやESRSとの相互適用可能性の確保による作成者の負担の軽減というメリットとのバランスを踏まえ、開示情報の作成(主に指標と考えられる)においてこれらの基準を明示的に参照可能とすることの意義は大きいと判断されたようです。投資家にフォーカスしない情報までもがIFRSサステナビリティ財務情報として開示されてしまうリスクに対しては、GRI/ESRSへの参照を許容する旨はあくまでAppendixに含める形で記載することで決着しました。
上記の結果、他の情報ソースの利用については最終的には以下の取扱いとなりました。
リスク・機会の特定時
Shall consider |
SASB基準におけるdisclosure topics |
May consider |
CDSBフレームワークガイダンス(水、生物多様性) |
投資家等を情報利用者とする他のサステナビリティ開示団体が公表した直近のガイダンス |
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企業と同じ産業や地域に属する他の企業が開示するリスク・機会 |
開示情報の特定時
Shall consider |
SASB基準におけるmetrics |
May consider |
CDSBフレームワークガイダンス(水、生物多様性) |
投資家等を情報利用者とする他のサステナビリティ開示団体が公表した直近のガイダンス |
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企業と同じ産業や地域に属する他の企業が開示するmetrics |
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May consider (Appendixに記載) |
GRI基準 |
ESRS基準 |
なお、2023年1月の会議において、これらの情報ソースのうち参照したもの(何を参照したのか)については開示が要求されることが暫定決定されています。
ISSB基準の適用日の決定
ISSB基準は2024年1月1日以降に開始する事業年度から適用することが暫定決定されました。最終基準の公表が2023年6月頃とされているため、最終基準の公表後6か月後には基準適用年度に入るということになります。
このような早期の適用日となった背景としては、ISSB基準の実際の適用はそれぞれの国や地域で決められるためです。すなわちISSB基準の実際の適用日の決定は国や地域(又はISSB基準を任意適用する企業)が行うため、ISSBとしては最も早い適用日を選択したことになります。
ISSB基準の適用日の決定に合わせて、過去のISSB会議で保留にされていた軽減措置についても以下のとおり暫定決定されています。
年度の財務諸表とIFRSサステナビリティ財務情報を同時に開示しなければならないという要求に対する軽減措置
n 企業に期中財務報告の義務がある場合は、年度の財務諸表を開示した後、次年度の第2四半期財務報告/中間財務報告を行う際に同時に開示する
n 企業に期中財務報告の義務はないが任意で期中財務報告を開示している場合は、年度の財務諸表を開示した後、次年度の第2四半期財務報告/中間財務報告を行う際に同時に開示する(ただし、年度の財務報告末日から9ヶ月を超えてはならない)
n 企業が期中財務報告を開示していない場合は、年度の財務報告末日から9ヶ月以内
以下の軽減措置の適用はS1/S2を初度適用した初年度のみとする(すなわち当該軽減措置の適用期間を1年のみとし、2年度目以降は当該軽減措置の適用は認められない)
n 上述した、年度の財務諸表とIFRSサステナビリティ財務情報の同時開示に対する軽減措置
n 企業がGHG排出量測定に際してGHGプロトコル以外の基準を用いている場合において当該GHGプロトコルとは異なる測定基準を継続使用できる軽減措置
n スコープ3 GHG排出量の開示の免除
上記のとおり、これら軽減措置の適用は1年間のみ(初度適用年度のみ)となり、想定され得る中で最も短い期間となりました。国や地域がISSB基準の適用を強制する場合や企業が任意にISSB基準を適用する際には、上記の軽減措置が使用できる期間が1年であることを前提にISSB基準の適用時期を決定する必要があります。
今後の予定
今後のステップとしては、今まで暫定決定された事項をもとにDraft S1/S2を修正する作業を行い、最終基準は2023年6月頃に開示される予定とされています。